第3回では、低コストな「FDM方式」と、高精細な「光造形(SLA)方式」を比較しました。
- FDM: コストは安いが、仕上がりが粗い 。
- SLA: 仕上がりは美しいが、材料の強度や耐久性には限界がある 。
では、製造現場で使われる「治具」や、小ロットの「最終製品」など、本当に使える強度を持った部品を作りたい場合はどうすればよいのでしょうか?その答えが、今回ご紹介する「SLS(粉末焼結)方式」です。

1. SLS(粉末焼結)方式とは?
SLS(Selective Laser Sintering)は、「高強度なナイロン製の部品」の製造に特化した方式です 。
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仕組み:ナイロン(PA11, PA12など)の「粉末」を、プリンター内部で薄く敷き詰めます。そこに高出力のレーザー光を選択的に照射し、粉末を瞬時に焼き固めて(焼結して)一層ずつ積み重ねていきます 。

SLS方式の「圧倒的なメリット」
SLS方式は、FDMやSLAが抱える根本的な課題を2つの点で解決します。
メリット(1) サポート材が「一切不要」
最大の特長です。FDMやSLAでは、宙に浮いた形状を作るために「サポート材」と呼ばれる支えが必須で、造形後にそれを取り除く面倒な後処理が発生しました。
SLS方式では、造形に使われなかった周りの粉末が、そのまま造形物を支えるサポート材の役割を果たします 2。
これにより、従来の方式では不可能だった複雑な内部構造や、ヒンジのように可動する部品(アセンブリ)も、一括で造形できます。
メリット(2) 非常に高い「強度」と「耐久性」
材料に「ナイロン」という高機能なエンジニアリングプラスチックを使用するため、造形物は非常に高強度で耐久性、耐熱性に優れています 。
FDMやSLAの部品が主に「試作(見た目や形状の確認)」レベルだったのに対し、SLSのナイロン部品は、実用的な「治具」や「機能部品」、さらには「最終製品(エンドユースパーツ)」としてそのまま使用できます 。
従来の課題と「Formlabsの革新」
これほど優れたSLS方式ですが、従来は「数千万円クラスの超大型な産業機械」しか存在せず、導入のハードルが極めて高い技術でした 。 この常識を覆したのが、Formlabsの「Fuse 1+ 30W」です。
Fuse 1+は、この産業用SLS技術を、コンパクトな筐体 8 と手の届く価格(数百万円レンジ 7)で実現しました。
さらに、使用されなかった粉末を最大70%も再利用(リサイクル)できる高い材料効率により 10、部品1個あたりの製造コストを劇的に下げ 11、中小企業や設計部門でも「高強度なナイロン部品の内製化」を現実的なものにしました。

2. その他の産業用方式
SLS以外にも、特定の目的に特化した産業用方式が存在します。
インクジェット方式(マテリアルジェッティング)
- 特徴: 「フルカラー」と「質感」の再現に特化 。
- 仕組み: プリンターヘッドから、微小な液滴状の光硬化性樹脂をインクのように噴射し、同時に紫外線を当てて瞬時に硬化させます。
- フルカラー: 数千~数十万色のリアルなフルカラー造形が可能です。
- マルチマテリアル: 硬い樹脂とゴムライクな柔らかい樹脂を同時に噴射し、複雑な質感(例えば、硬いケースと柔らかいボタンが一体化した部品)を一度に再現できます。
- デメリット: 材料が光硬化性樹脂であるため、強度や耐久性、耐熱性はSLAと同様に高くありません 。
- 主な用途: 製品の最終的な外観や質感を検証するための「意匠モック(デザインモデル)」。
粉末固着方式(バインダージェッティング)
- 特徴: 「金属部品の大量生産」や「鋳造用の砂型」に使われる 。
- 仕組み: SLSと似ていますが、レーザーではなく「接着剤(バインダー)」を使います。敷き詰められた金属や砂の粉末に、インクジェットヘッドから接着剤を選択的に噴射して固めます。
- メリット: 造形速度が非常に速く、金属部品の量産に向いています。
- デメリット: 造形したままの部品(グリーン体)は強度が非常に低く、金属の場合は、造形後に「脱脂」と「焼結」という、高温の炉(ファーネス)を使った大規模な後処理が必須です。
まとめ:方式ごとの「適材適所」
ここまでで主要な方式が出揃いました。それぞれの得意分野を整理しましょう。
- FDM方式:【得意】とにかく低コスト。簡易的な形状確認。
- SLA方式 (Form 4):【得意】圧倒的な高精細・滑らかさ。デザインや精密な嵌合(かんごう)の確認 。
- SLS方式 (Fuse 1+):【得意】高強度・高耐久なナイロン部品/サポート不要で複雑な形状や最終製品が作れる。
- インクジェット方式:【得意】フルカラーや複合材料。リアルな「意匠モック」。
- バインダージェッティング:【得意】金属部品や砂型の大量生産(ただし大規模な後処理が必要)。
このように、目的によって最適なソリューションは全く異なります。

次回予告:
いよいよ最終回です。
第5回では、これまでの情報を総まとめし、「高精細な試作がしたい」「強度のある治具を内製化したい」といった具体的なビジネス課題ごとに、今選ぶべき最適な3Dプリンターを推奨します。
引用文献
-
実例紹介】3Dプリンターを活用したハンドメイド雑貨 ~22選 - グレぴよ工房,
https://grape-piyo.com/3dp-goods/ -
SLS方式とは?:導入や活用のために知っておくと良い基本ガイド
https://www.yam-sls-3dprinter.com/post/blog-20241023-sls-technology -
歯科用3Dプリンター(歯科用)の活用事例を一挙に紹介
https://www.dent3d-navi.com/example/ -
試作用語集 SLS(粉末焼結積層法)とは|粉末材料をレーザーで焼結させる3Dプリント方式 - 株式会社エムトピア
https://emtopia.net/yougoshu/sls-printing -
3Dプリンターを作れるもので選ぶ | 3Dプリンター・3Dプリントならi-MAKER
https://i-maker.jp/blog/select-3dprint-make-33988.html -
Formlabs SLS - Brule,
https://www.brule.co.jp/learn/3d-printing/formlabs-sls.html -
3Dプリンターを種類と造形方式から選ぶ
https://i-maker.jp/blog/select-3dprint-method-33992.html -
HP Jet Fusion 3D Series vs. Formlabs Fuse 1+ 30W
https://formlabs.com/compare/hp-jet-fusion-3d-series-vs-formlabs-fuse-1/?wchannelid=ehmpz3codk&wmediaid=g68g25ioam -
Formlabs Fuse 1+ 30W vs. EOS SLS 3D Printers
https://formlabs.com/compare/eos-sls-3d-printers-vs-formlabs-fuse-series/ -
Fuse1+30W/Fuse Sift レーザー焼結(SLS)3Dプリンター
https://i-maker.jp/blog/fuse1-sls-3dprinter-35026.html -
3Dプリンターの方式・仕組み・特徴を解説(2025年最新版)
https://www.3d-printer.jp/knowledge/classification/ -
インクジェット3Dプリンターの原理と仕組み。種類と製法を公開
https://i-maker.jp/blog/jetting-3d-print-10411.html -
Color 3D Printing - Stratasys Support Center
https://support.stratasys.com/en/Applications/Color -
PolyJet 3D Printers I Stratasys PolyJet J Series | R&D - R&D Technologies
https://www.rnd-tech.com/3d-printers-product-lines/polyjet/j-series/ -
Binder Jetting 3d printer: the best guide | 3DPTEK - lyafs
https://www.lyafs.com/binder-jetting-3d-printer -
Revolutionize metal 3D printing with HP scalable platform configurations
https://www.hp.com/us-en/printers/3d-printers/products/metal-jet.html -
粉末固着方式 - 全国中学高校Webコンテスト,
https://contest.japias.jp/tqj25/250164W/type-bjp.html -
EASYMFG unveils M200Eco and M400Plus metal binder jetting 3D printers for 2025
https://www.voxelmatters.com/easymfg-unveils-m200eco-and-m400plus-metal-binder-jetting-3d-printers-for-2025/